2012年9月25日火曜日

デモが止んだホントの理由


 日本製品の購入を控えよう!
 なんて言う話があるようだが、実際のところ上海で生活しているとそんな事いっさい忘れてしまうくらいまったくもって何も変化を感じられないくらいである。

 一昨日の日曜日にユニクロに行ってきた。上海の中心、南京西路にあるフラッグショップである。

 開店前には入り口付近にパトカーが止まっていたり、警備の人が立っていたりなんだかやっぱりいつもとはちょっと違う重々しい雰囲気をかもしていたが、開店してみればそんな危惧は粉々に吹き飛ばされるくらい、みじんも感じさせない大盛況ぶりをみせていた。

 中国における反日デモは、例の「満州事変」の9月18日をピークに、突如ピタリと止んでしまっている。
 この理由は、反日デモの破壊行為を危惧した政府が押さえ込んだ結果、と報じられているが、実際のところは、それだけではないようだ。そもそも破壊行為自体、もともと政府は見て見ぬ振りをしてきている訳で、その懸念だけではココまで完全にデモを封じ込めるのは難しいはずである。

 最大の理由は、実のところ今回の「反日デモ」が、一部「反政府デモ」へと変わっていった事、にあるようである。

 普段こそはナカナカ表に出てこないので分かりずらいのだが、反政府思想は今やあらゆるところに溢れているようで、こうした何らかの「きっかけ」をかわきりに、突如表面に現れる事があるようだ。このような勢力が大きく盛り上がってしまうと、事態はかつての「天安門事件」のようにトンでもない事になりかねないし、今や完全な国際社会になっている中国ではアノ頃のような暴挙はもはや許されない状況なのだ(もちろん当時だって許されないのだが)。

 従ってデモを起こすというのはある意味政府にとっては非常に危険な行為でもあり、普段はこのような「大勢が集まって何らかの主義、思想を発信する行為」は禁止されているのが現状である。

 そんな訳で大規模デモの周りには必ずと言っていいほど、警察が取り囲んでいる。何か異分子がシナリオに無い行動を起こそうものなら、すぐにモミ消してしまえるようになっているのである。今回、デモが突如押さえ込まれた理由としては、この反政府分子の勢力が、そもそも思っていた以上に大きかったため、という風にも考えられそうだ。

 また、デモが急になくなったもう一つの大きな理由として、そもそも反日デモ自体が、政府が仕組んで作り上げたものだから、というコトが挙げられる。

 今や政府を擁護するようなカタチの思想活動として、「国民が主体になって行うデモのようなもの」は、「起こりえない」といいきれるくらい、一般人の政府への不満は大きくなってきているようである。今回のデモに関しても、集まったのは結局のところ地方から政府がカネで集めた出稼ぎデモ要員が主体となっていたようである。だからこそ政府の意志で「ピタリと」デモを完全に押さえ込む事ができるのである。

 今回地方都市を中心に多発した日本車破壊行為にしても、同じような事が言えそうだ。先日の報道では、実はかなりタチの悪い連中が仕掛けているようで、破壊行為にまぎれて車上荒らしをしていたグループの一部が逮捕された、というのがニュースになっていた。

 しかしながら、これは「中国は正しいカタチで『抗議活動』を行っており、破壊行為を働いているのは『政府とは全く関係のない輩』である」と国際社会へアピールする為のパフォーマンスすぎないようだ。

 日本車破壊行為が地方都市にしか起きていないのは、結局のところ上海や北京、香港などの国際都市でこのような野蛮な行為をしては国際社会への影響が大きすぎる、というのが分かりきっていた事が原因で、わざと破壊行為は地方都市を中心に、と決め込んでいたとしか考えられない。

 報道というのはおもしろいもので、デモのシーンを流して「どこどこのデモの様子」といってしまえば、その「どこどこ」の状況はもう「ヤバイ!」と思えてしまうものなのである。ところが実のところはどれほどの規模なのか、実際現地でその状況を感じてみなければナカナカに分からないのが事実だ。

 だいたいからしてメディアは平和な風景を映しても「ネタ」にはならないので、結局「絵になる」モノばかりが集められ、受け手側はついつい「なんかヤバいんじゃあ!?」と思ってしまうことになるようだ。

 とりあえず、上海は平和ですよ、とココでは私自身が感じた「絵にならない」報告をしておこう。

9月23日日曜日、大盛況のユニクロ上海南京西路店の様子

2012年9月22日土曜日

『将棋盤から飛び出した駒』


 「知識人」というのはナカナカおもしろい表現だとおもう。「知識」ってフツーは誰にでもあるはずなのに、「知識」を取り上げてくくってしまうってコトはそーとーな「知識」に溢れているのか、それともその他大勢がおバカだと言いたくてしょうがないのか。

 中国では「知識人」のことを「知識分子」と呼ぶようだ。文革の頃は「知識分子」が主な標的になったのはよく知られている事実である。

 現代中国を代表する「知識人」として今や絶大な支持を得ている韓寒さんをご存知だろうか?
 文化人としての面が取りざたされるが、彼はF1レーサーとしても有名である。そして驚きなのはなんと1982年生まれである、という事実である!なんとまだ若いのだ!
 昨年のクリスマス前後には中国についての思想を文章にして3日連続で発表したり、都度都度話題をかっさらう「時代の人」なのである。

 そんな彼が、先日の9月17日に、最近の島問題に触れた文章を自身の微博に発表している。
 タイトルは『跳出棋的棋子(将棋盤から飛び出した駒)』というもので、非常に興味深い内容だ。コレまた長いのでココで全文を紹介する事は避けるが、文章の最後の部分だけ取り上げて紹介したい。

8、 
 愛国のコートをまとったからって同胞に危害を加えたり、好き勝手に暴力を発散していいなんて思っちゃいけない。たとえ他の人がだまって見過ごそうと、そんな事を続けていたって自分自身にいい事なんてありゃしない。

 主人は未だに酒瓶をふるまっているのに、あなたはとっくに酔っぱらってしまった。主人がようやく自身のコップに酒を注いだ頃には、あなたはもう泥酔で取り乱してしまっており、それを主人は快く思わない。

 主人はあなたに「ほろ酔い」であってほしいのだ。永遠のほろ酔い。「ほろ酔い」は催眠にかけやすいが、暴れ回られては危険を招く。

 将棋盤から飛び出した駒は、たとえ国旗を羽織ろうと、結局のところただの捨て駒にすぎない。



2012年9月20日木曜日

『文革まであと一時間』


 デモの報道は世界各地で行われているようで、やっぱりそれに付随するように世界各地で反日デモが現地の中国人によって行われたようである。

 一方で私の周囲の中国人は、今回の出来事に関してかなり冷静な態度を保っている。日本人の友人を持ている私の友人はさすがに今回のデモに参加したりする人間はいなかったが、そんな彼らを差し引いても、周囲の中国人は非常に冷静に見ている、というのが私の印象である。

 先日のブログに紹介したレストランのウェーターしかり、私の住んでいるアパートのまわりの人たちも、いつも通り会えばニコリと「ニーハオ」を言ってくれ、その度に心がホッとする。

 昨晩中国人の友人がミニブログでシェアしていた記事が興味深いのでココで紹介したい。
 タイトルは『第二次文革まであと一時間』というもの。(内容は長いのでざっくり要約、原文は文末に。)

 「あの」文化大革命ーたくさんの民間人、知識人が殺され、皆が貧困に苦しんだ暗黒の革命ーが過ぎ去って以来、何が変わったか?
 既にあの「文革」以来30年が過ぎ去っているのに、相変わらず言論は抑圧され、紅歌(共産党讃歌)が歌われ、共産党スローガンが叫ばれ、数々の不条理な破壊行為が黙認されている。
 実際のところ我々の心は、あの「文革」以来、実はまだほんの「1時間」も経っていないのかもしれない。

 現在、我々は尖閣諸島をはじめ数々の対外問題に直面している。それでも、今我々が抱えている「文革」の病に比べれば、私には取るに足らない問題のように感じられてならない。

 今後2、30年のうちに、はたして文革を根底から消し去る事ができるだろうか?
 私は決して楽観しない。
 なぜならホンの「1時間」の間に、一切合切が変わることができるからだ。
 あらゆることが起こりうる。

 今、私たちと「文革」との距離はたった「1時間」だ。
 だけれども、明日はどうなるか、誰が分かるだろう。

 私には分からない。
 私には全く分からない!


 この内容、今日もう一度確認しようと彼のシェアしたページを覗いてみたところ、案の定すっかり消し去られていた。(この内容はそれを見越して保存しておいたものである)

 「文革まであと1時間」という興味深い内容だが、私は私自身が身近に感じる中国のみなさんの暖かさの方を信じていたい。

 

2012年9月18日火曜日

9.18(満州事変)@上海


 9.18事変、日本で言うところの「満州事変」があった今日は、上海でも早くから大規模デモの計画がされており、実際予定通り遂行されたようである。

 上海の日系企業は、多くが今日は休日自宅待機となっており、私の勤める会社も例に漏れず自宅待機となっている。そんなワケで私的にはチャンスとばかり、今日はクレジットカードの審査と、ジャズフェスのチケットが来るように手配しておいたのであった。

 反日一大デモの計画のその日に、日本人の自宅まで営業しにこなければならない中国人もかわいそうだが、こちらだって見ず知らずの中国人をこんなに世間が「荒れている」と言われる時期に家に招き入れるのは気が引けもする。実のところ内心ちょっとそわそわしていたのだが、どちらも反日のデモが行われているとはまったく感じさせない非常に普通の対応でやってきて、去っていった。 

 ただ、クレジットカードの方は申請したはずのカードの「申請書が切れてしまった」という訳の分からん理由で、申請したのとは全く別のしかもプラチナカードの申請書を持ってきたので、丁寧にお断りし帰ってもらうこととなった。チケットの方も4枚頼んでおいたはずがたった2枚しか来なかったので、「やり直し」をお願いして帰ってもらうことに。

 こんな風に、段取りの悪さも完全にいつもと変わらず、平穏な上海の一日を今のトコロ過ごせている。

 先ほど牛乳を買いに近くのスーパーまで行ってみた。こちらはわざわざ着ていたユニクロのTシャツを脱いで無地のTシャツに着替えてから行ったのに、町中フツーに日本車は走っているは、ヤマザキパンの紙袋を持ったおじさんは平気で歩いているは、普段と全く変わらない感じであった。

 上海でも場所によってはかなりの人数を集め、反日集会をやっていたらしいが、なんだかんだそれも結局一部の人たちの話で、大部分の上海人は今のトコロは冷静に傍観しているようだ。

 ちなみに「9.18事件」をグーグル日本で検索してみると満州事件ではなく全く別の「アイドルマスター2」とかいうゲームの件が出てきてしまうトコロに、両国の歴史問題の捉え方にも大きく差が出ているコトを強く感じさせられるのは私だけか?

 日本と中国、アメリカも加わってどのように収拾をつけるのか見物ではあるが、影響ををモロに受けるこっちに住んでる日本人の一人として、取り急ぎ、なんとかしてもらいたいものである。

中国最有力検索サイト「百度」の本日のトップ画面は、尖閣諸島に中国の国旗を立てたデザイン

2012年9月17日月曜日

車は日本車だけど心は中国

 ネット上の写真から〜車に貼られた標語より。
 左側:「車は日本車だけど心は中国」
 右側:「尖閣諸島は中国だけのもの 蒼井そらだけが世界のもの」

 日本車に乗ってる言い訳?
 車にこのような反日標語を掲げるのが流行っている、というのがニュースになっていた。私の周りの上海では今のトコロまだ見かけない。このような張り紙を掲げてしまうと「私はおバカですよ」とふれて回っているようなもので、ソコのところ良くわかっている上海人はそーいうことはしないのだろう。

 広州など南の方では反日の大規模デモが今回早くからあり、日本車がひっくり返されたりしていたようだ。上の写真はそんな輩から愛車を守る手段かもしれない。(日本車をひっくり返すデモに参加したものの、帰ってきたら自分の日本車がひっくり返されていて号泣、という記事を見た事がある…)

写真リンク先:


尖閣諸島は誰のもの?

 「尖閣諸島は誰のもの?」
 と聞かれても、実際のところ一般市民の私たちにはナカナカ簡単に答えを出す事はできないのがホンネ。

 日本も中国も当然のように「自国のもん」だと言い張るだけでは当たり前だが解決には繋がらない。だからといって面と向かって話し合って「誰のもの」かが解決するか、といわれれば、するかどうか、よーわからんが、とりあえずいがみ合っているよりは、キチンと話し合いを始めるのが「正しいオトナ」のやり方ではなかろうか。

 それをせずにいるのは、要は様々な理由があるってコトに他ならない。つまり両国とも「自国のもん」だと言い張るものの、「自国のもん」だと本当に国際社会に向けて胸を張って言い切れる材料が実のところ不足している、という話になってくる。

 この地域の紛争の厄介さは、日本と中国2カ国間だけの問題ではなく、台湾とアメリカというその他2地域が絡んできている、というトコロでもあるらしい。

 とはいってもオトナなんだから、全てさらけて解決する、もしくはお互い解決しない方向で、と合意してグレーのままにしておく、とかいろいろ方法はあるではなかろうか?結局のトコロ、日本も中国もこの問題を迷走する政治の「駒の一つ」として動かしているのが問題で、実は我々一般人が必要にぎゃーぎゃー騒いでもどーにもならないし、どこかで誰かが喜ぶだけであろう。

 そーやって大事な「国益」を守らないといけないっつーことで、両国民がいがみ合いをはじめると、その「国益」が原因で中国在住の今や10万人とも言われる「国民」が大迷惑だ、というのも多少なりとも憂慮してほしいわけである。

 もう両国とも持ちつ持たれつなのは、今更言うまでもない事実。もう少しオトナになっていわゆるWin-Winな関係をつくっていこうとしてもいいのでは?
 (実は政治的には今の関係式がWin-Winだったりして??)

 下記リンクは中国側のだいたいの意見をまとめたサイトである。中国語なので何言ってるか分からんかもだが、まあ中国側の主張を知る機会としてピックアップ。
http://news.baidu.com/z/dydzd/zhuanti.html


ホントの上海の反日感情は?

 中国が「タイヘンなコト」になっているらしい。
 というのを何人かの日本の友人から聞いた。

  上海に住んでいる限り、さほどその「タイヘンなコト」はよくわからない。もちろんここでいう「タイヘンなコト」は、今回の「尖閣諸島」をめぐる両国の対立と、それに伴う日本へのバッシングについてである。

  私の住んでいるここ上海の静安区ではまだ今のところそこまでの激しさは感じられない。この週末にはようやく始めて上海で半日デモが政府の指導の下敢行され、また今度の火曜日にはより大規模なデモが行われるようである。ニュースではかなり「小日本」についてあーだこーだ騒がれているようだが、普通にきちんと教育を受けている沿岸部大都市籍を持っている人たちは割と冷静なようだ。  

 今日は嫁と近くのイタリアンに行って昼ゴハンを食べたのだが、そこのウェイターのおしゃべり好きな上海人の男性は、私たちのテーブルに来るたびに今回の反日デモの件をいろいろ好き勝手しゃべっていった。彼曰く、今回の「游行(デモの事をこのように言う)は、政府が集めた地方の人たちで、上海人はそんなこと絶対にしない。もうすぐ国の代表が変わるので、その前後で起こりうる政治への不満の矛先を日本へ向けようとしているにすぎない。」というコトであった。

  おもしろいのは上海人は必ずと言っていいほど「上海人はそんな事しない」と、「上海人」という部分を強調しするトコロである。同じ事は「北京」でも当てはまり、やっぱり北京でも何かと犯罪やら何やらがあるとそれは全て「外地人」がやっていることで「北京人」はそんな事しない、ときっぱり言い張る。真実のほどは定かではないが、確かに今は生粋の「上海人」「北京人」よりも「外地人」の人口の方が圧倒的に多くなり、特にそういった出稼ぎでくる「外地人」は教育も行き届いていない事もあり、マナーも悪く、中には犯罪を起こす輩がどうしてもいるのだろう。

  今回と同じような事が、ちょうど7年前にも起こっているという。日本大使館の周りにデモが終結し、ガラスを割ったりした、というのだ。当時ウェイターの彼は学生だったそうだが、学校の先生は「間違ってもそういうものに参加したりしないように」と釘を刺していたそうだ。  そんな訳で中国にいるとどうしても対外的な政府のパフォーマンスと、本当の現地人の声との2種類を聞き分ける必要が生じてくる。

  その反面日本は「報道こそ全て」といわんばかり、国民の「民意」は全て報道と共に「右へ習え」な状態であるようで、むしろ心配になってくるのは私だけか? 下記は両国の国民感情を表したグラフである。 これまた結局どこまでが参考になるのか分からないが、一応タイムリーなので載せておこう。
  http://news.sina.com.cn/c/t/20120914/181341.shtml